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種子発育不全と子房落下

異なる植物間で交雑を行うと、種子が正常に発達しなかったり、子房が成熟前に落下することがあります。当研究室の研究により、これらの生殖隔離が完全に独立した現象ではなく、関連した現象であることがわかってきました。

子房落下と種子の様子.jpg

子房落下と種子発達の様子(He et al. 2020)

タバコの種間交雑において、正常な種子が採れる交雑組合せ、種子発育不全が生じる交雑組合せ、子房落下が生じる交雑組合せを見出しました。両親の倍数性を人為的に操作して交雑実験を行った結果、交雑組合せによって異なる交雑結果が得られる理由が両親の倍数性の違いにあることを明らかにしました。

 

例えば、4倍体×4倍体では正常種子が得られ、8倍体×4倍体では種子発育不全、16倍体×4倍体では子房落下が生じます。さらに、父親の倍数性を増加させて交雑することで、これらの生殖隔離を克服することができました。

種子切片.jpg

倍数性の異なる種間交雑での種子発達の異常(上から2段目)

両親の倍数性を操作することで、種子発達異常の正常化(3段目)あるいは促進(4段目)が認められた(He et al. 2020)

種子発育不全と子房落下にはまだわかっていないことが多く、それらを解明するために研究を続けています。

種子発育不全と子房落下に関連する発表論文

*:責任著者、下線:本研究グループの学生、太字下線:教員

  1. Kenji Kawaguchi, Yuichiro Ohya, Maho Maekawa, Takahiro Iizuka, Akira Hasegawa, Kumpei Shiragaki, Hai He, Masayuki Oda, Toshinobu Morikawa, Shuji Yokoi, Takahiro Tezuka* (2021) Two Nicotiana occidentalis accessions enable gene identification for Type II hybrid lethality by the cross to N. sylvestris. Scientific Reports 11: 17093

  2. Hai He, Shuji Yokoi, Takahiro Tezuka* (2020) A high maternal genome excess causes severe seed abortion leading to ovary abscission in Nicotiana interploidy-interspecific crosses. Plant Direct 4(8): e00257

  3. Hai He, Takahiro Iizuka, Maho Maekawa, Kumi Sadahisa, Toshinobu Morikawa, Masanori Yanase, Shuji Yokoi, Masayuki Oda, Takahiro Tezuka* (2019) Nicotiana suaveolens accessions with different ploidy levels exhibit different reproductive isolation mechanisms in interspecific crosses with Nicotiana tabacum. Journal of Plant Research 132(4): 461-471

  4. 手塚孝弘*・一谷勝之・松本雄一・何海・木下哲・宅見薫雄・久保山勉(2019)植物の生殖隔離機構解明に向けて ―多様性と統一性―.育種学研究 21(1): 75-80

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